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2013/12/30

具体化と抽象化を繰り返すことでイノベーティブなものが生まれるのかなという話


■背景

「イノベーティブなモノを生み出す」ことが近年のテーマになっているように感じますが、これほど概念のざっくりした目標も無いですね。
ただそれでもイノベーションを起こした人や、イノベーションを起こそうと考えている人たちの多くが、同じ原理のことを主張していると感じたので、今回はそれを記します。




■主張され続ける原理とは

その原理とはタイトルにもあるように、「具体化」と「抽象化」を「繰り返す」ことです。

■具体化と抽象化


辞書で具体化と抽象化を引くと、
具体化: 抽象的な事柄を実際に形にして表すこと。
抽象化: 抽象的にすること。
と書かれています。

なにやらよくわからないので、以下で説明をしていきます。



■人を動かすための「具体化」と「抽象化」とは


抽象的、具体的、を上手く捉えている(と個人的に思っている)のがTed Talkの[[サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか]]のお話。

"人は「何を」ではなく 「なぜ」に動かされる"

という話で、下図のような円(彼はこれをゴールデンサークルと呼びました)で具体化と抽象化を考えました。

一般の人は具体的なもの(What)の説明(WHY)を述べるのに対し、(「what」→「how」→「why」の順) 飛びぬけたリーダーは「なぜ我々はそれを行っているのか」という問いから物事を伝えるという話(「why」→「how」→「what」の順で考え、伝える)

例えばTEDの中でこんな例を出していました。

"(飛び抜けたリーダーである)アップルならこんな風に伝えます。

我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています
違う考え方に価値があると信じています
私たちが世界を変える手段は 美しくデザインされ 簡単に使えて 親しみやすい製品です
こうして素晴らしいコンピュータができあがりました

もしもアップルが他の(一般的な)会社と同じだったら 以下の様な CM を作るでしょう。

我々のコンピュータは素晴らしく 美しいデザインで簡単に使え ユーザフレンドリーです。
ひとつ いかがですか?

これでは心を動かされません"
サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか | TEDを日本語で読む:TED人気スピーチ日本語訳 - 30秒で把握するTEDプレゼン:


要はwhyの無いモノには誰も惹かれない、という話です。

本記事ではここでいう「WHAT」を具体的、「WHY」を抽象的、と考えて話を進めています。

Ted Talkの[[サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか]]のお話では「伝え方」に特化して話を進めていますが、次に紹介する例は「考え方」です。

■良いアイデアを出すための「具体化」と「抽象化」の「繰り返し」


次にアイデアを出す際にの具体化、抽象化、繰り返しについて紹介します。

USBメモリなど世の中に数多くのイノベーティブなモノを送り出してきたZiba の濱口さんは、ブレストを行う際の「具体化」と「抽象化」、そしてその繰り返しの必要性について述べました。

頭に思い浮かべるブレストはおそらく、「否定してはいけない」などいくつかのルールのもと、アイデアを自由に出していき投票によってその中でのベストなアイデアを決める、と言ったものでしょう。

濱口さんの言うブレストには「その後」があります。「なぜそのアイデアが良いと思ったのか」という理由を3つ書きだすというものです。

それは具体的なアイデアとして出た「良いモノ」(具体的なもの)から、その裏に潜む「なぜそれが良いと判断されたのか」という軸(抽象的なもの)を見つけ出すための作業です。

日本人の性質を活かした究極のブレストとは?[濱口秀司] | VISION | ISSUES | WORKSIGHT: の中では日傘のイノベーションを例にとっていました。
ざっくり説明すると以下です。

日傘で考えたときに、ブレスト後のアイデアを良いと思った理由として「対象の性別を変える」、「構成パーツの数を変える」といったものが見つかったとします。
そこから「男性⇔女性」「(パーツ)ゼロ⇔無限」という軸が出てきます。そこにアイデアをマッピングしてみると、「女性を対象」かつ「多くのパーツから構成」というバイアスがある事が考えられます。それが見えると注目していない次元として「男性を対象」と「より少ない部品から構成」という方向でユニークな日傘のコンセプトが組まれ始めます。
もしくは実は誰もポイントしないこの構造の真ん中(軸の交点)にユニークな答えがあるかもしれません。
男女兼用で少しシンプル......女性用なのだが、男性一緒にも使えるシンプルな日傘。例えば、二段階に開く日傘で、普段は小さく広げて使い、彼氏と一緒に暑い日差しの下歩くときは広く広げて彼氏に持ってもらう。でも構成は少しシンプルに軽く......このようにして新しい日傘のヒントを探ります。
もちろん対象者や構造以外の切り口を探してきてもかまいません。とにかく、バイアス構造を見つけて壊すことを目指すことが大切なのです。

濱口さんはこのように、具体化と抽象化を繰り返すことでよいアイデアが出る、ということを言っています。

image via
日本人の性質を活かした究極のブレストとは?[濱口秀司] | VISION | ISSUES | WORKSIGHT:


■デザインにおける具体化と抽象化の繰り返し

濱口さんの話しは「アイデア出し」に特化した話ですが、これはもちろん「アイデア出し」のみの話ではありません。
例えばCentral は、デザインプロセスを以下のように表しています。


この図は左からReserch, Prototype, Designの順に進んでいく図で、実際のパスを実線でぐちゃぐちゃに書いていったものです。どのプロセスにおいても前進(具体化)と後進(抽象化)を繰り返し、最終的に真っ直ぐな線に行き着いています。

スタンフォードのデザインイノベーションプログラムをとった際も、「ニードファインディング」を行いユーザの発言や行動の「Why」を考えることでユーザの深いところにあるニーズを理解し、それを実現するためのプロトタイプを作成し、テストする、といったことが重要であると言われそれを繰り返していました。トヨタの5whyもそうですね。

ニードをきちんと理解することも具体化と抽象化であり、そこからアイデアを出すのも具体化と抽象化であり、プロトタイプを作りテストを行うことも具体化と抽象化です。


抽象化と具体化を繰り返す原理は「HOW」と「WHY」です。(ここまで行くと僕の修論とかなり主張がにてくるのですが、修論はまた違った形で公開します。ちなみに修論はその具体度と抽象度をいくつかのレベルで定義することで、事象がどの具体度にあるかを把握でき、抽象化と具体化を効果的に行うことの出来るフレームワークです。)

具体的なものと抽象的なものを行き来する

まとめてはありますが実際にこれを行うとなったら非常に難しい。あとは実践あるのみ、ですかね。

■ストレスとイノベーション


  「目に見えた成果を出す」ことを考えると、人は具体化を急ぎます。ようはHOWしか考えなくなります。目に見える「何か」をとりあえず作りたくなります。

それによって「達成感」を得ることが出来、やったぞという「主張」をすることが出来るからです。
しかし人を動かす「WHY」が抜けていては、人は動きません。

イノベーションには時間がかかるんですね。。。

■方法論

行き来するための方法論として、濱口さんの言うような「軸の見える化」やトヨタのような5whyなどが上げられます。KJ法などもそうですかね。

■余談

目指すべきゴールは良く見えなくて曖昧。ただなんとなく「良い」ものは感じることが出来る。「具体化」することは進むことです。「抽象化」することはゴールの位置を設定することです。ゴールを明確にするために「データ」や「ユーザテスト」を指針にします。進んでみたところで、今回設定していたゴールよりもより確からしいゴールが見つかります。そこにまたゴールを定め、進んでいく。そんな感じ?

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